セサミンは加熱調理も安心
セサミンは、肝機能の向上やガン予防、シミ・しわ対策など様々な効能を持つ栄養素として知られています。セサミンはゴマに含まれていますから、ゴマを使った料理でセサミンを摂ろうという人もいるかと思います。その際に気になるのが、「調理の際に、熱でセサミンの栄養が壊れてしまわないか」ということです。今回は、セサミンと加熱調理についてご紹介します。
セサミンは加熱調理でも壊れない
セサミンは、ポリフェノールと呼ばれる、植物に含まれる栄養素の一種です。ポリフェノールの中には、熱に強いタイプと弱いタイプがあるのですが、セサミンは熱に強いタイプに分類されます。ですので、煮る・炒める・蒸す・焦がすといった加熱調理を行っても、セサミンが変化して、栄養を失うということはありません。
一般的な市販のゴマ油は、茶色をしていますが、これは原料の白ゴマを焙煎して搾油をしているからなのです(白色・透明のゴマ油はほとんど焙煎をしていないものです)。焙煎という高温の処理を経たゴマ油に、1gあたり4.9mgのセサミンが含まれていることからも、セサミンが熱に強い栄養素であることが分かるかと思います。
加熱調理で壊れる栄養素と壊れない栄養素
セサミンが熱でも壊れにくい栄養素ということは分かりましたが、加熱調理で壊れる栄養素とそうでない栄養素には、何か違いがあるのでしょうか?
加熱調理に弱い栄養素
熱に弱い栄養素として代表的なものは、ビタミンCです。これは実は、熱に弱いというよりも、酸化しやすいと言った方が正確です。加熱調理の際に、ビタミンCと空気中の酸素が反応してしまうことによって、別の物質(ジゲトグロン酸)に変わってしまい、持っていた効能を失ってしまうのです。そのため、ジャガイモやサツマイモのように、デンプンでビタミンCが保護されている場合には、ビタミンCはそれほど変化しません。
ビタミンCが加熱調理で酸化して、変わってしまうのは、ビタミンCが持つ「抗酸化作用」によるものとも言うことができます。酸素が変化した活性酸素は、人体に有害な物質で、さまざまな病気や老化現象の原因となります。この、活性酸素と反応して、除去する働きが抗酸化作用なのですが、その「酸素と反応する」という性質が災いして、加熱調理の際に、変化してしまうことにつながったのです。
ビタミンCだけでなく、抗酸化作用を持つ栄養素の中には、このような理由で加熱調理時に栄養が失われてしまうものが少なくありません。熱に弱い抗酸化物質には、ビタミンC以外にも、ビタミンEやアントシアニンなどがあります。
なぜセサミンは加熱調理で壊されないのか
抗酸化作用と言えば、セサミンの効能の多くも抗酸化作用によるもの(ガン予防、シミ・しわ予防、動脈硬化予防など)です。しかし、抗酸化作用を持つにもかかわらず、セサミンが熱に強いのは、セサミンの抗酸化作用が、加熱に弱いビタミンCなどとは異なるタイプの抗酸化作用だからです。活性酸素と呼ばれる有害物質には複数種類あり、酸素が直接変化していない有害物質も含まれています。セサミンは、酸素由来ではない活性酸素(過酸化脂質)を除去するため、加熱されても酸素と反応して形が変わるということがないのです。
ちなみに、セサミンは加熱によっても変化しない栄養素ですが、セサミン以外のゴマ固有の栄養素の中には、加熱によって構造が変化し、別の物質に変わるものもあります。
ゴマには、セサミン以外にも豊富なポリフェノールが含まれており、セサミノール、セサモリン、セサモールなどと名付けられています。高温処理である焙煎をあまりしないゴマ油が白色・透明であるのに対して、焙煎をしたゴマ油は、茶色をしています。この焙煎の過程でセサモリンは構造が変化して、セサモールとなります。
セサモリンも、セサモリンが変化したセサモール、さらにはセサミノールもみな、セサミンと同じく抗酸化作用を持っています。そのため、ゴマ油は他の油に比べて酸化しにくいとされています。少なくとも、セサミンを始めとするゴマ固有の栄養素(ゴマリグナン)については、加熱による栄養の喪失は心配しないでも大丈夫なのですね。
加熱調理で壊れない代わりに気をつけるべきこと
セサミンが加熱調理でも壊れないのは良いとして、何か他の要因で壊れてしまうことはないのでしょうか?
セサミンはゴマ油を精製する過程で、少し構造が変化したエピセサミンという物質に変化することがあります。しかし、このエピセサミンもセサミンと同じく抗酸化作用を持ち、同じ効能を示しますので、身体への栄養効果に変わりはありません。市販のサプリメントでも、セサミンとエピセサミンが混合状態の製品が、「セサミン」サプリメントとして販売されているほどですから、セサミンからエピセサミンへの変化を気にする必要はまったくありません。
また、熱以外に栄養素を破壊するものに、水や紫外線がありますが、セサミンはそのどちらの影響も受けません。そういう意味でセサミンは、安定して壊れにくい栄養素と呼べます。
セサミンの構造が変わって、栄養が失われてしまうこととは少し違いますが、セサミンは脂溶性(水に溶けにくく、油に溶けやすい)ですから、すりゴマなどを使った料理では、油の中に溶けだします。いくらセサミンが溶け込んでいるからといっても、油を飲み干してしまっては、健康に良くありません。すりゴマを使って料理をする際には、なるべく調理の最後の段階で加えることで、セサミンが油に溶けだすのを防ぐのが良いでしょう。
まとめ
栄養素は、熱に強いタイプとそうでないタイプに分かれますが、セサミンは熱に強いタイプですので、加熱調理をしても、栄養が失われることがありません。高温で焙煎を行ったゴマ油に、大量のセサミンが含まれていることからも、セサミンが熱に強いことが分かります。
セサミンと同じ抗酸化作用を持つビタミンCなどは、加熱調理によって栄養が失われてしまいますが、これは加熱によって酸素と反応し、栄養を持たない物質に変化してしまうのが原因なのです。これに対して、セサミンは、酸素と反応しないで活性酸素を除去するパターンの抗酸化作用なので、加熱によって酸素と反応し、別の物質に変化するということがないのです。
セサミン以外のゴマ固有の栄養素の中には、加熱によって別の物質に変化するものもありますが、変化した後の物質も同じ効能を示す栄養素です。ゴマに関しては、加熱調理によって、効能が変化することはないと考えて問題ありません。
セサミンは、加熱調理以外に、水や紫外線によっても変化することはありません。しかし、セサミンは油に溶けますので、すりゴマを料理に用いる際には、なるべく最後に投入するようにして、セサミンが油に溶けだしてしまうのを防ぐようにしましょう。